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編入学試験を受けた高専生がおすすめする物理の勉強法

  1. 進路関係
  2. 学習法
  3. #大学編入

今回は編入学試験において合否を左右する「物理」について、試験範囲と勉強法を紹介したいと思います。

まず、編入物理でよく出題される分野は、力学、電磁気学、熱力学、波動の4つです。他分野が出題される場合もありますが、それらはどれもこの4つの分野を基礎としているのです。

おすすめの参考書も併せて紹介しますから、ぜひ最後までご覧ください!

物理学習のアドバイス

物理の学習は数学と同様、大きく理論と演習の二つに分かれます。

理論を学んだ後で演習に取り組むのが一般的ですが、理論を学ぶ段階で時間をかけすぎず、早めに演習に取り組むようにしましょう。

理論を学ぶ段階で気づかなかったことが演習を通して理解できるようになるということは多々あるからです。

分からないときは基本に立ち返る。理論と演習を交互に

理論では、現象の理解とともに、法則や公式の導出も勉強するようにしましょう。実際に試験で出題される可能性がありますし、何より本質を深く理解することに役立ちます。

演習では、特に解答のプロセスを重視しましょう。せっかく問題の答えがわかっても、どのような条件の下で、どの法則を用いて、どのように計算したのかを正確に記さなければ、本番の試験で高得点を取ることはできません。

そして、わからなくなったら基本に立ち返ることを忘れずに。理論と演習を交互にすることで、解ける問題の幅が広がっていくはずです。

各分野の対策①力学

力学はまず高校範囲の演習から

力学は基本的に大学範囲から出題されますが、高校範囲の問題の解法が大学範囲の学習にかなり役立ちます。大学範囲で初めて、ベクトル、内積・外積、微分積分、微分方程式といった数学を用いますが、力を図示し、条件から立式するという力学の本質は同じですから、まずは高校範囲の演習をしましょう。

「つり合いの式」「運動方程式」「保存則」を使いこなす練習が最も重要

力学では、物体にどのような力がはたらき、どのように運動するのかを考えた上で、つり合いの式、運動方程式、保存則を用いて解を導く問題がほとんどです。まずは物体を投げる、滑らせる、ぶつけるといった一般的な運動の問題パターンでこの3つのツールを使いこなす練習をしましょう。
この練習こそが最も重要であり、力学の演習の半分を占めていると言って差し支えありません。

また、力学的エネルギー保存則と運動量保存則の二つは使い分けの判断が難しく、かなりの類題経験が必須となります。

円運動や振動、万有引力の法則とケプラーの法則はそれまでの一般的な運動とは異なる特別なケースですが、条件さえ押さえれば結局は3つのツールに帰着します。

基礎を固めたうえで最も対策すべきは剛体の力学

基礎を固めた上で、最も対策すべき範囲は剛体の力学です。

剛体の運動を解析するためには並進運動と回転運動の2つの運動方程式を立式する必要があり、回転運動の運動方程式に必要な「慣性モーメントを積分で求める問題」と併せて一つの大問になることが多いです。

この大問一つで解答者の数学力と物理力を一度に測ることができる上に、大学範囲で初めて登場する分野であるため、出題される可能性が高いのです。

各分野の対策②電磁気学

電磁気学は基本的に大学範囲から出題されます。大学範囲ではベクトル解析の表記で表されるため、高校範囲の表記とのギャップによって混乱する可能性が力学よりも高いです。

ベクトル解析といっても、問題を解くのに必要な積分形の場合は線積分と面積分さえわかれば理解できます。

静電場(時間変化しない電場)の問題では、電場の大きさを求めることがメインとなります。そのためのツールとして、クーロンの法則やガウスの法則を利用することになります。
静電気力、電位、静電容量などはすべて電場と関係式で結ばれており、副次的に求めることが多いです。

それぞれ十分な演習が必要

コンデンサに関する問題は多岐にわたるため多くの演習が必要です。同様に静磁場では磁場(もしくは磁束密度)の大きさを求めるのですが、アンペールの法則は適用範囲が狭く、ビオ・サバールの法則は計算の難易度が高いので十分に演習が必要です。

電場と磁場が同時に出現する電磁誘導の問題では、力学の問題と絡めて出題される場合が多いですが、単体で出題される場合には高校範囲の学習が役に立ちます。

ここで出てくるローレンツ力は荷電粒子の運動を扱う問題でも活用できます。

これらの範囲では外積を用いて力や電流の向きを決定する問題がよく出題されます。一見複雑そうですが、パターンが決まった問題ばかりなので対策は比較的楽なはずです。

電気電子系学科でないなら回路の問題は要対策

回路の問題は大学によって出題の頻度が大きく異なる分野です。直流回路では合成抵抗・合成容量やエネルギーの変化、交流回路では過渡現象や共振現象が出題されます。電気電子系学科では専門科目で電磁気学よりも電気回路を得意とする人が多いので、他学科の人は対策を怠ると差が開くことになってしまいます。

各分野の対策③熱力学

熱力学では主として大学範囲から出題されます。高校範囲の学習をあまり重視せずに軽く一周し、大学範囲の学習に取り組みましょう。多くの大学では熱力学で高度な数学を使わせる問題は出ません。
 熱力学第一法則と理想気体の状態方程式を組み合わせることで、ほとんどの基本問題を解くことができます。この2つはマイヤーの関係式やポアソンの法則の導出に使われるほか、熱サイクルの熱効率を求める際に必須となります。熱効率の問題は、工学応用上重要であるため、花形の問題と言えます。熱力学第二法則は言葉で表されるため、計算問題に使うことはありませんが、エントロピーの変化は求められるようにしましょう。熱効率の問題と併せて出題されます。

各分野の対策④波動

波動では主に高校範囲から出題されます。大学範囲では、波の速さやエネルギー、位相速度と群速度、波動方程式などがありますが、出題する大学は多くないので最初は高校範囲を中心に勉強しましょう。

波の基本性質はそれ自体が出題されることはかなり稀ですが、音と光の現象理解と計算には必須です。

音では共鳴、うなり、ドップラー効果という現象を扱いますが、これらがセットで出題されるか、問題パターンが豊富なドップラー効果のみを出題するのが一般的です。

光で最も出題されるのは干渉であり、その問題パターンは多岐にわたります。
反射の法則や屈折の法則を駆使し、幾何学的な計算で解く必要があり、他の物理分野とは異なる能力を試されます。

おすすめの参考書

物理のエッセンス

高校範囲の物理を勉強するときにおすすめです。

特に力学と波動は高校範囲が重要となるので、力学・波動編は必携の書です。さらに高度な問題に挑戦したいときは、同じ著者の名問の森に取り組むと良いでしょう。

ちなみに原子の分野は問題を解かずに文章を読む程度でいいと思います。

弱点克服 大学生の初等力学、弱点克服 大学生の電磁気学

編入試験に出題された問題を多く扱っている問題集です。見開き1ページで1問、問題と解答がセットになっているので取り組みやすいです。誤植が多く、問題の選び方も最良とは言えませんが、編入生向けの貴重な一冊です。

演習マセマ熱力学

この本の講義3から講義5だけで今回紹介した熱力学の範囲は網羅できます。熱サイクルの熱効率の問題が豊富です。力学と電磁気学はマセマだけでは不足していると思います。

フロー式 物理演習シリーズ 振動と波動

大学範囲の波動を勉強する際におすすめです。力学の振動も併せて勉強でき、かなり薄いので早く一周できます。

サイエンス社の黄色い問題集

編入生に広く親しまれていますが、表記・表現が古かったり、難易度にばらつきがあったりと、あまりおすすめはできません。それでも上記の参考書だけで不安であれば、取り組むと良いと思います。

おわりに

今回は編入物理について詳しく解説してきました!工学部で必須な数学力と物理力はどの大学でも重要視しています。じっくり時間をかけて、勉強に励みましょう。次回は編入数学について、今回と同じように紹介できたらと思います。

最後に、この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。ではまた!

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函館高専
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函館高専の5年生です!YouTubeでゲーム実況を見ることが唯一の日課です。専門は電気電子ですが、卒業研究で機械学習を使うために、プログラミングを必死になって勉強しています。ここでは様々な科目の勉強法や参考書紹介の記事などを書いていきたいと考えています。よろしくお願いします!

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